自民の強引な議会運営に異議アリ ――日本史教科書採択で論戦
11日に9月定例県議会が閉会しましたが、議論の焦点となったテーマが高校の日本史教科書採択でした。自民党や刷新の会の一部議員が、高校日本史で実教出版の教科書が一部の学校で選ばれたことを問題視し、県教育委員会に採択のやり直しを求める決議を提出しました。公明党は、教育の政治的中立を守る立場からこの決議に猛然と反対。民主党、共産党、社民党も反対しましたが、自民、刷新の会などの賛成多数で決議は可決してしまいました。
そもそも決議とは議会の意志を示すために行うものですが、はっきりと賛否の割れるようなテーマを賛成多数で押し切ることが議会総体の意志と言えるでしょうか。否であります。ほかにも、「新たな森事業の執行停止を求める決議」が自民などの賛成多数で可決されましたが、こうした議会運営に対して、「自民党は強気の議会運営に拍車をかけている」(毎日新聞)、「自民党県議団の決め方が請求、強引」(埼玉新聞)と、マスコミからも批判の声が寄せられています。
なを、日本史教科書採択の再審査を求める決議に対して、公明党から蒲生徳明議員が反対討論を展開。議会後、私のもとにも、「蒲生議員の討論が一番説得力があった」「ぜひ公明党に頑張ってもらいたい」との声も寄せられています。以下、蒲生議員の討論を掲載いたします。
◇ ◇
公明党の蒲生徳明です。公明党県議団を代表して、議第18号「高校日本史教科書採択の再審査を求める決議」について、反対する立場から討論を行います。
本決議案は、高校日本史教科書の採択について、県教育委員会の取り組みが不十分であるとして、再審査を求めるものであります。
県立高校の教科書採択は、毎年度、各教科の検定済み教科書の中から、県教育委員会が採択することになっております。
しかし、対象となる検定済み教科書は全部で17教科、約900種類という膨大な数になり、そのすべてに6人の教育委員が目を通し、なをかつ、適切な教科書を各学校に選ぶことは実質的に不可能であります。
ですから、当然のこととして、各学校において、それぞれの実情を踏まえた適切な選択をし、県教委としてもそれを尊重するのが賢明、かつ、常識的な判断であることは、言うまでもありません。
かといって、県教育委員会は何もしなかったわけではありません。独自に教科書の調査・研究を行い、学校訪問や校長ヒアリングなどを重ねた上で、最終的な判断をしており、手続き的にも何ら瑕疵はありません。
それに対して、本決議案は、「各学校の希望通りの採択が行われた」こと自体を問題視し、「教科書の内容を十分把握しない今回の教科書採択には、実質的な瑕疵があったと言わざるを得ない」と、一方的に決めつけております。
しかし、文教委員会の審議でも明らかになった通り、教育委員は問題視された実教出版の教科書について、特に提案者が問題視しているような記述が含まれていることも十分認識した上で、最終的な結論を下しており、しっかりと主体的な判断をしているのであります。
それを問題だ、採択をやり直せというのは、余りにも無茶な要求であり、理の通らない話であります。
ところで、本決議案は今議会で突然出てきたものではありません。閉会中、2度にわたって文教委員会が開かれ、教科書採択について審査が行われた延長線上にあるものです。特に、9月13日の文教委員会には、実教出版の教科書を選んだ8校の校長が委員会に呼ばれました。
公明党は、校長を議会に呼ぶことに対して強く反対しましたが、残念ながら聞き入れられませんでした。特定の教科書を選んだ校長を議会に呼んで答弁させたことは明らかに「やり過ぎ」であります。
議会の意向に沿わないことをすれば、議会に呼ばれるかもしれないという誤ったメッセージを教育現場に伝えてしまいました。
これは教育現場を委縮させるだけであります。さらに、議会の良識が県民から疑われるような行為であったと言わざるを得ません。
公教育における政治的中立は近代教育の大原則であります。また、私たちは、日本を悲惨な戦争に導いた軍国主義教育の過ちを忘れてはなりません。
議員各位がいかなる歴史認識や政治思想を持とうが自由でありますが、多数派だからといって、それを公教育の場に持ち込むことはやめていただきたい。
押しつけや強制では子供たちの健全な歴史認識は育ちません。
また、議会の多数派はいつ変わるかわかりません。そのたびに、政治が教育に介入していては、現場が混乱するだけであります。
よって、仮に本決議が可決されたとしても、本県教育には少しもプラスにならないことを強く申し上げ、反対討論といたします。